第30回国家試験 午後105
18歳の男子。道の練習中に足払いを頻回に受けた際、下腿部に疼痛を感じた。下袴に血液の付着がみられたが、そのまま練習を継続した。3日後、疼痛および腫脹が増強し来所した。来所時、下腿部に発赤を伴う腫脹、熱感がみられ体温は38.5であった。
考えられるのはどれか。2つ選べ。
正解!
不正解 答え 1・4
1→1) 蜂窩織炎:
道着に血液の付着が見られるという点は外傷性の切り傷や擦り傷などの可能性を示唆しており、そのような傷口から感染が起きると蜂窩織炎(皮下組織の感染症)が発症することがあります。足払いを受けた際の外傷により発生した傷口から細菌が侵入し、感染が広がったことで発赤、腫脹、熱感が生じている可能性があります。また、体温の上昇も感染による全身症状であるため、蜂窩織炎が考えられます。選択肢1は正解の一つです。
2) シンスプリント:
シンスプリントは、下腿の内側に強い疼痛が現れる症状で、一般には運動やトレーニングの強度が急に上がった際、特にランニングスポーツにおいて見られます。疼痛は運動時に顕著ですが、休息時には痛みが引くことが多いです。このケースでは疼痛が増強し、腫脹や赤み、熱感があり体温も上昇しているため、シンスプリントだけでは症状を説明することが難しく、シンスプリントを主訴にする案件では体温の上昇が伴うことは一般的ではありません。選択肢2は誤りです。
3) 脛骨悪性骨腫瘍:
脛骨悪性骨腫瘍は、癌の一種であり通常は腫脹、骨痛、硬直感などが慢性的に続きます。急性の外傷後に直ちに症状が現れるものではなく、症状の発現も徐々に進むのが特徴です。癌による症状が短期間で体温の上昇を引き起こすことは少なく、急性の感染症状とは異なります。そのため、このケースで脛骨悪性骨腫瘍が考えられるとは限りません。選択肢3は誤りです。
4) 急性コンパートメント症候群:
急性コンパートメント症候群は、筋肉を被覆する筋膜のコンパートメント内圧が異常に上昇し、血液循環が不全に陥る状態です。外傷や骨折、ときには激しい運動後に発症することがあります。このケースでは、疼痛および腫脹が増強し、発赤や熱感も伴っており、体温上昇も見られています。これらの症状は急性コンパートメント症候群に似ていますが、急性コンパートメント症候群では感染よりは圧迫による局所症状がより顕著であり、感染を示唆する体温の明確な上昇は一般的ではありません。しかし、この選択肢も症状が合致するため、正解の一つと考えられます。選択肢4は正解の一つです。