第32回国家試験 午後44
76歳の女性。大腿骨頸部骨折の手術後、離床を開始した直後に突然の胸痛と呼吸困難を訴えた。経皮的酸素飽和度は88%と低下し、頻脈、頻呼吸がみられた。最も考えられるのはどれか。
正解!
不正解 答え 4
1→1) 気管支喘息
気管支喘息は、炎症により気道が狭くなり、呼吸困難、喘鳴(ヒューヒューという音)、胸の締め付け感などの症状が発生します。しかし、本事例のように手術後直後に発生する呼吸困難は、喘息よりも術後に発生しやすい血栓関連の合併症を疑う方が妥当です。そのため、これは不適切な選択肢です。
2) 心房細動
心房細動は心臓の不整脈の一種で、胸痛や呼吸困難などの症状があり得ますが、手術直後の離床によって突然発生するといったケースは少ないです。心房細動による症状はより緩やかに発症することが多く、経皮的酸素飽和度が低下する主な原因としては考えにくいため、これも不適切な選択肢です。
3) 肺炎
肺炎は感染により肺が炎症を起こし、発熱、咳、痰、息苦しさなどの症状が現れます。肺炎も呼吸困難を引き起こす疾患の一つですが、手術後の離床直後に急激に症状が現れるのは一般的ではありません。また、発熱や咳など他の症状の言及もないため、最も考えられる原因とは言い難いです。
4) 肺血栓塞栓症
肺血栓塞栓症は、血栓が肺の血管を塞ぐことで発生します。手術後は静脈血栓症(DVT)が形成されやすく、特に下肢の手術ではリスクが高まります。大腿骨頸部骨折の手術後に血栓が移動して肺血管を塞ぐことがあります。呼吸困難、胸痛、頻脈、低い酸素飽和度などの症状は肺血栓塞栓症の特徴です。手術直後に離床したことにより血栓が肺に移動し、症状が急激に出現した可能性が高く、この事例では最も考えられる疾患となります。したがって、選択肢4が正解です。