第32回国家試験 午後118
14歳の男子。肥満体型。はっきりとした原因はなく、1か月くらい前から遊んでいるときに、右膝に痛みを感じるようになったため来所した。3日前から右膝部や股関節部の痛みが増強してきたと訴えている。腫脹、圧痛、熱感はみられないが、下肢の他動運動で股関節に屈曲制限がみられた。最も考えられるのはどれか。
正解!
不正解 答え 3
1→1) 大腿骨肉腫
大腿骨肉腫は骨の悪性腫瘍の一種で、しばしば腫れや圧痛を伴います。また、深刻な場合は痛みが休む時も継続し、夜間痛が特徴的です。しかし、肥満体型の14歳であり、腫脹、圧痛、熱感がなく、股関節に屈曲制限があることから、最も考えられるのは大腿骨肿瘍よりも他の選択肢の可能性が高いです。
2) 単純性股関節炎
単純性股関節炎は小児によく見られる疾患で、股関節の痛みや歩行時のびっこを引き起こすことがあります。しかし、この疾患は急性に発症し、しばしば腫脹や圧痛をともなうことから、このケースのように病歴が1か月におよび、腫脹、圧痛、熱感がない場合は、単純性股関節炎の可能性は低いと考えられます。
3) 大腿骨頭すべり症
大腿骨頭すべり症は肥満のある思春期に多く発症する疾患で、大腿骨頭が成長板を境にして後方あるいは下方に滑り落ちることが特徴です。この疾患は股関節の痛みや太もも、膝部への放散痛、股関節の動きに制限が生じることがあります。本ケースでは、股関節に屈曲制限があり、痛みの病歴が1か月続いており、肥満体型の14歳という点から、大腿骨頭すべり症が最も考えられると判断されます。選択肢3が正解です。
4) 腸腰筋膿瘍
腸腰筋膿瘍は腸腰筋の周囲に膿が溜まる疾患で、激しい痛みと共に股関節の拘縮を引き起こす可能性があります。通常、発熱や局所的な熱感と腫脹がみられます。しかし、本ケースでは腫脹や熱感がなく、症状が1か月以上前から持続していることから、腸腰筋膿瘍の可能性は低いと判断されます。