第31回国家試験 午後122
42歳の男性。マラソン愛好家。ランニング後に右足底踵部のしびれを自覚し、1か月間症状が変わらないため来所した。足趾を他動的に背屈しても症状に変化はなかったが、その際に内果部に当てた検者の母指の圧迫によって症状が増悪した。超音波観察を行ったところ、同部に境界明瞭な低エコーの腫瘤がみられた。
考えられるのはどれか。
正解!
不正解 答え 3
1→問題250の正解は「3.ガングリオン」となります。以下、その解説を示します。
選択肢1:足底腱膜炎
足底腱膜炎はランニングを行う人によく見られる症状で、足底の踵近くに慢性的な痛みが特徴です。しかし、超音波で低エコーの腫瘤が確認されることは一般的ではなく、また、しびれや圧迫による症状の増悪も足底腱膜炎の典型的な特徴ではありません。
選択肢2:踵骨疲労骨折
踵骨疲労骨折もランニング愛好家に起こり得る怪我ですが、この場合は通常、激しい痛みが主訴となります。超音波で腫瘤のような構造が見えることはほぼありません。
選択肢3:ガングリオン
ガングリオンは関節や腱の近くに形成される液体を含んだ袋(嚢胞)で、超音波で低エコーの腫瘤として観察されることがあります。内部は粘性の液体で満たされており、これが神経を圧迫することによりしびれや痛みが誘発されることがあります。本症例のように特定の圧迫によって症状が増悪するのもガングリオンの特徴的な表現です。
選択肢4:モートン(Morton)病
モートン病は足の神経の変性により生じる症状で、主に前足部に痛みやしびれが生じます。しかし、この病気は踵部には関連しないため、本症例の症状とは一致しません。
このため、マラソン愛好家の男性が示す症状と超音波所見から、「ガングリオン」が最も可能性の高い診断と考えられます。治療はしばしば積極的な介入を必要とせず、場合によっては穿刺や手術が行われることがあります。