1→羽ばたき振戦(flapping tremor)は、またの名を「肝疹(liver flap)」とも呼ばれ、とくに腕を伸ばし、手首を曲げた状態で手のひらを上下に振るような特徴的な振戦です。以下、選択肢ごとの解説です。
1) 神経症
神経症では通常、羽ばたき振戦は認められません。神経症は不安、恐怖、緊張などの精神的な症状を引き起こす心因性の障害であり、主に内科的な病態に基づく振戦とは異なります。
2) 肝性脳症
肝性脳症においては羽ばたき振戦がよく観察され、これは肝臓の機能不全が進行し、脳に影響を及ぼす際に特徴的な神経学的徴候として現れます。肝硬変や肝不全の患者に多く見られ、アンモニアなどの有害物質が体内に蓄積することで生じると考えられています。選択肢2が正解です。
3) 低カルシウム血症
低カルシウム血症では、重度の場合に手足のしびれや筋肉のけいれん(テタニー)が起こることがありますが、羽ばたき振戦は典型的な症状ではありません。チボースト徴候やトルーソー徴候などの症状が有名です。
4) 甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症では、手指の細かい振戦が観察されることが多いですが、これは羽ばたき振戦よりも高周波で細かい振戦が特徴です。その他の典型的な症状としては、動悸、体重減少、熱感覚の変化などがあります。
従って、羽ばたき振戦を呈する疾患は「選択肢2) 肝性脳症」です。