第32回国家試験 午後110
10歳の女児。ソフトボールで補球した際、右手小指が外転強制された。右第5MP関節の腫脹と、基節骨基部に限局性の圧痛がみられる。MP関節伸展では小指は外転位をとり環指から離れている。DIPおよびPIP関節に異常はなかった。考えられるのはどれか。
正解!
不正解 答え 4
1→1) MP関節捻挫
選択肢1のMP関節捻挫は、関節周囲の靱帯や組織が損傷されるものですが、このケースでは基節骨基部に限局性の圧痛があるため、単に捻挫では説明がつかない症状が見られます。また、捻挫であれば通常は腫脹だけでなく、運動制限や動かした際の痛みも目立つことが多いです。
2) 中手骨骨頭骨折
選択肢2の中手骨骨頭骨折は、MP関節のすぐ近くで起こる骨折です。しかし、このケースでは指の基節骨基部に圧痛があることから、骨折部位はもっと末端方向、すなわち骨頭ではなく基部である可能性が高いです。したがって、中手骨骨頭骨折では症状と一致しません。
3) 中手骨頸部骨折
選択肢3の中手骨頸部骨折は、中手骨の細い頸部が骨折する場合です。臨床ではよく見られる骨折ですが、小指の外転位置と腫脹の説明にはなりますが、基節骨基部の圧痛については説明できません。中手骨頸部骨折では通常、骨折が中手骨に位置しているためです。
4) 基節骨骨端線離開
選択肢4の基節骨骨端線離開は、成長期において骨端線周辺で起こる離開、つまり骨端線が隣接する骨質から分離する損傷です。このケースでは、10歳という年齢が骨端線離開を考える上で重要です。成長期にある子供は骨端線が閉鎖しておらず、トラウマによって容易に障害を受ける場合があります。また、MP関節伸展時に小指が外転位をとるという症状も、基節骨基端部の損傷のために起きる可能性が高く、基節骨骨端線離開がこのケースでの最も考えられる診断です。選択肢4が正解です。