第30回国家試験 午後23
64歳の男性。脳梗塞を発症後、コミュニケーション障害が生じた。口数が少なく、「痛いところはありますか」と尋ねると、「う、ん」と答え、「どこですか」と尋ねると何か言おうとするものの言葉にならないようである。「ボールペンと言ってください」と指示すると、「ボーボ...」と途中まで言いかけ てあきらめてしまった。「左手でじゃんけんのチョキをしてください」という指示には間違いなく従える。
考えられる症状はどれか。
正解!
不正解 答え 3
1→1) 全失語
全失語では、患者は発語と理解の両方に深刻な障害を持っています。このケースでは、患者は「ボールペン」という言葉を一部発声しようとしているため、完全に発語が失われているわけではないことが示唆されています。また、単純な身体動作の指示には従えるため、すべての言語機能が失われているわけではないようです。
2) 伝導失語
伝導失語では、発話と理解の間に障害があり、特に言葉の繰り返しや発話の修正が難しい状態です。この事例では、患者が言葉の発声を試みるが完全には発することができていないため、伝導失語の可能性も考えられます。ただし、この症状だけで確定診断を行うには情報が不足しています。
3) ブローカ失語
ブローカ失語は、発話能力が損なわれる一方で、言語理解能力は比較的保持される状態です。このケースの患者は、言葉にならない程度の発話障害を呈する一方で、簡単な命令(「じゃんけんのチョキをして」)に従うことができているため、この症例にはブローカ失語が最も適していると考えられます。選択肢3が正解です。
4) ウェルニッケ失語
ウェルニッケ失語は、言語理解の障害が特徴的であり、しばしば意味をなさない言葉(ジャーゴン)を話すことが特徴です。患者は話が通じないといった症状を持つことが多く、このケースでは患者は命令に従うことができているため、ウェルニッケ失語の可能性は低いです。