第30回国家試験 午後112
14歳の女子。ソフトボール部活動中、左投げで遠投をしたところ「ガクッ」と音とともに肩に違和感を自覚し来所した。左上腕を下方へ引き下げたところ、肩峰と上腕との間に間隙ができた。
考えられるのはどれか。
正解!
不正解 答え 1
1→1) 動揺性肩関節症
動揺性肩関節症(多方向性肩関節不安定症)は、肩関節周囲の軟部組織のバランスが悪く、肩関節が正常な位置を保てない状態です。特に若年層で見られやすく、遠投のような繰り返しの激しい肩の使用によって発生することがあります。「ガクッ」といった音とともに肩に違和感を感じる症状や、肩の間隙が明らかになる現象は、肩関節が正常な位置からずれていることを示唆しています。そのため、選択肢1が正解です。
2) リトルリーガー肩
リトルリーガー肩は、若年の野球選手に多く見られる上腕骨近位端の成長軟骨へのストレス障害です。投球動作の繰り返しによる過負荷が原因で発症し、疼痛や投球障害が主な症状として表れます。本症例では肩峰と上腕骨との間に間隙ができたとの特徴があり、リトルリーガー肩とは異なる症状であるため、この選択肢は正解ではありません。
3) ベネット損傷
ベネット損傷は、拳関節(第一中手骨基部)の骨折であり、拳を作った状態で何かに強打した際に発生しやすい怪我です。肩関節の症状とは関連がないため、この症例には当てはまりません。したがって、この選択肢は正解ではありません。
4) 肩峰下インピンジメント症候群
肩峰下インピンジメント症候群は、肩峰と上腕骨頭との間にある腱や滑液包が圧迫されることで、痛みや動きの制限が起こる症状です。これは肩の繰り返し使う運動によって生じる可能性がありますが、肩に違和感を感じた後、肩峰と上腕骨との間に間隙ができるような症状は、インピンジメント症候群ではなく、肩関節の不安定さを示唆しています。そのため、この選択肢も正解ではありません。